龍神様との恋愛事情!
「夏休みとか、よく遊びに付き合ってもらったな…」
都会育ちの私は、小さい頃から緑豊かな自然に飢えていた。
目と鼻の先に山や田んぼが当たり前に存在するこの町は、私にとってのオアシス。
それほど田舎ではないけれど、道を歩けば野生の猿に出会うのは普通。
畑に猪が出れば、キジも庭に飛んでくる。
夜にはフクロウの声もよく聞こえる。
虫の大きさが都会よりも一・五倍なのは勘弁してほしいけど、まあ、慣れればなんとか。
家も、道も、山も、川も、全部が昔のまま。
なのに、人だけが変わってく。
「はぁ…」
溜息をついてから二人分の湯飲みを持った。
「おばあちゃーん。お茶入ったよ…って、あれ?」
居間にいると思ったのに、そこはもぬけの殻。
まさか――。