腕枕で眠らせて*eternal season*



「水嶋さん。我々医師は、人類が長い年月を経て研究してきた結果から原因を導き、良い結果を残すであろう治療を勧める事しか出来ません。
絶対はありません。確率である事を前提としてお聞きください」


検査結果を、女性医師はそう前置きしてから伝えた。


「抗精子抗体は体の中に精子に対する免疫反応として抗体が出来てしまうものです。
今のところ抗体を消す有効な治療はなく、当院では人工受精か体外受精を勧めています」


「…つまり…それって…」


「自然妊娠の可能性は不可能に近いと言うことです」





―――紗和己さん。


私ね

貴方に何をしてあげたかったのか

やっと、分かったよ。


私ね

貴方に家族を作ってあげたかったんだ。




「体外受精の方が身体の負担も大きく料金も掛かりますが妊娠の確率は高いです」




―――私ね

安らげる場所を

誇れる家族を、貴方に作ってあげたかったの。




「次回から治療を始められますか?」




―――やっと分かったよ、紗和己さん。


私にも出来る筈だった
私にしか出来ない筈だった

一生をかけて貴方に幸せを返してあげる方法。


ああ。なのにね。




「………すみません。少し考えさせて下さい」




――――――ゴメンね。




< 117 / 150 >

この作品をシェア

pagetop