腕枕で眠らせて*eternal season*
夕焼け雲は茜色。
そろそろ1日の終わりを告げようと、空がグラデーションのカーテンを広げていく。
空の色が濃い青に染まっていくのと同じ流れで、秋の空気はひんやりと冷たさを広げ出した。
「寒くないですか、美織さん」
病院からの帰り道、いつの日かと同じように紗和己さんが私を抱き寄せてぬくもりを与える。
医師の言葉を聞いてから、声も出せずずっと強張っていた私の顔が、ぬくもりに溶かされるようにみるみる泣き崩れていった。
足が止まって、身体から力が抜けて、その場にしゃがみこんでしまう。
「……紗和己さん、ごめん……ごめんなさい……ごめんなさい……紗和己さん………」
『自然妊娠の可能性は不可能に近いと言うことです』
ふたりの未来を掻き消した医師の言葉が頭の中に木霊する。
幼子のように道端で泣きじゃくる私を、紗和己さんはただ黙って抱きしめた。
しゃがみこんで重なりあった影が夕焼けに照らされて伸びている。
「……ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい……」
繰り返した言葉は抱きしめる彼の胸に強く押し付けられ、くぐもって消えていった。