腕枕で眠らせて*eternal season*
「お疲れさまです、玉城さん。山下さんから聞きました。ひとりで対応大変でしたね、ありがとうございます」
部屋に入り、チラリと椅子に座っている犯人とテーブルの上に並べられた万引きされた商品を確認すると、彼はそう私に労いの言葉を掛けた。
「あ、あの、オーナー」
「あとは僕が見てますから、玉城さんはレジへ戻って山下さんのフォローに入ってください。店内、混んできてるんで」
「あ、はい。あの」
「警察に連絡は?」
「えっと、それがまだ…」
「分かりました。僕がしておきます」
突然事務室にオーナーが入ってきた事に驚いていた犯人が、私たちのやり取りを聞いて再び大声で泣き出した。
「警察にだけは連絡しないで下さい!お願いです!!」
その喚き声を聞いて、困惑の表情と共に私の足が止まる。
…けれど。
「大丈夫。ここは僕に任せて玉城さんはお店の方をお願いします」
私にそう言いながら、彼は困惑どころか躊躇もせずに携帯を取り出して警察への番号をダイヤルした。
それを見た犯人が椅子から立ち上がり泣き喚いて詰め寄ったけど、彼は顔色ひとつ変える事なく
「大丈夫ですんで、お店の方に」
と戸惑ってる私を仕事へ戻るように促した。
……正直、以外だった。
あのオーナーなら、犯人の涙にほだされあっさり許すんじゃないかと思っていた。
彼女の身の上話をこんこんと聞き、挙げ句相談にさえ乗ってやったりするんじゃないかと。
ところが、レジにまで微かに漏れ聞こえてくる犯人の喚き声から察するに…そんなぬるい展開にはなっていない事が伺えた。