“ブラック”&“ホワイト”クリスマス

「ったく…サンタクロースにまで子供扱いされるなんて…」


 風船を持ったまま、ガックリとうなだれるアンジュ。


「子供だから仕方ねぇだろ。サンタのお陰で俺も冷静になったぜ。さ、行くぞ、見回りに」

「やだ」

「はァ!?」

「やっぱあたしは公園に行く! こっちにいたいならアダム1人で見回ってていいよ!!」


 言い終わらないうちに、アンジュは走り出した。


「あっ! 待てこら!! ったく~マジで子供かよ!!」


 どんどん遠ざかるアンジュを追い掛けながら、アダムは携帯を取り出した。


「俺だ。アンジュが動いた」


 それだけ言うと携帯を閉じて、アダムは全力でアンジュを追い掛け始める。



☆  ☆  ☆


 公園に向かって全力で走っていると、スマホが着信音を鳴らした。

 走りながらだとどうしてもタッチパネルが押しづらい。

 少しスピードを落として、アンジュはやっと通話ボタンを押す。


「あたしよ!!」

“アンジュ!? 早く来て、ヤツらが動いた…!!”


 やっぱり。

 自分の直感は、当たるのだ。


「もうすぐよ、頑張ってクロシェット!」


 通話終了のボタンをタッチするのももどかしく、アンジュはそのままスマホをポケットに突っ込んだ。

 そして、再び全力で走り出す。

 いい加減息も切れてきた頃、アンジュはようやく公園に辿り着いた。


「………」


 息を整えながら辺りを見回すが、公園は暗い。

 あれだけ力を入れたというイルミネーションなんて、何処にも灯っていない。

 クロシェットは。

 レンヌは、どこにいるのだろう。

 嫌な予感が頭の中を駆け巡ったが、アンジュはゆっくりと公園の中に向かって歩き出した。

 ついでに、スマホで時間を確認して。

 時刻は、深夜11時26分。

 まだだ。

 まだ、日付は変わっていない。


「諦めない…!!」


 木の影に、気配を感じる。

 例え1人でも、戦い抜くだけだ。

 身軽な動きで、アンジュはその気配の元を倒した。

 ぱっと、自分の周りに少しだけ、イルミネーションが灯る。

 さっきよりは幾分か見通しが良くなった公園を、アンジュは更に進んだ。
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