“ブラック”&“ホワイト”クリスマス
 敵を倒しながら突き進むアンジュ。

 公園の中心に向かって、アンジュの通った道筋に沿うように、イルミネーションが灯っていく。

 そして、公園の中心…噴水の前に辿り着いた。

 本来なら恋人達で溢れかえっている筈の。

 だが今は、アンジュが通った道筋に小さなイルミネーションが灯っているだけで、薄暗い噴水の周りには、誰もいない。

 ――いや、1人だけ。


「やっぱり、ここが最終決戦の場所だよね」


 パーカーのポケットに両手を突っ込んでゆっくりとあるきながら、アンジュはその人影に向かって声をかけた。

 人影に、だんだん近づく。

 薄明かりの中でも、ようやく相手の姿が見える位置まで。


「捨てたもんじゃないでしょ、あたしの直感もさ」


 立ち止まり、アンジュは真っ直ぐにその相手を見据えた。


「……そうだな」


 アンジュはぎり、と奥歯を噛み締めた。

 そうでもしないと、泣いてしまいそうだったから。


「あたしを足止め出来なくて残念だったね、アダム…じゃなくて、ブラック」


 そこに立っていたのは、アダムだった。

 いや、今は、スーツのネクタイもちゃんと締め直して。

 今アンジュの目の前にいるこの男は、組織「ブラック」のリーダーだ。


「そうだな…デートの真似事で、お前を足止め出来ると思ったんだけどな…意外と冷静なんだな」

「バカにしてんの?」

「いや。組織「ホワイト」のエースだからこそ、わざわざ俺が足止めしてたんだよ。他の連中じゃ、頼りにならないからな」

「……そう。それは光栄だね」


 アンジュは、ぐっとポケットの中の拳を握り締めた。

 さっきアダムに貰ったキーホルダーに、指が触れる。

 アンジュは、そっと両手をポケットから出した。


「ケリ、つけなきゃだもんね。こうなったからには、容赦しない。本気でいくよ」


 体制を低くする。

 黙ってそんなアンジュを見つめる「ブラック」。

 暗すぎて、その表情は伺えない。

 アンジュは息を吐き出し、ブラックに立ち向かう。
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