面倒臭がりの異界冒険伝
悠奈は残虐そうに笑みを浮かべて、相手の持つ短剣に今更怯む事なくさっと身を屈め、かかってきた男の懐に一気に入り込む。
そして右の奴には拳を、左の奴には回し蹴りをプレゼントして瞬時に吹き飛ばした。
痛みに呻きつつも気を失わなかったその二人には、もう一発づつ喰らわせて眠らせれば、後はすでに負け腰のリーダー唯一人が残った。
「く、くそっ…調子に乗りやがって!」
リーダーの男が上擦った声で、それでも虚勢を張り、まだ奥の手があるかのように懐に手を忍ばす様を冷めた目で見下す。
何を取り出すのかとほんの僅かに好奇心も湧いて見ていたものの、それは小さな赤い指輪だった。
そんなものを取り出したところで状況は変わらないだろうのに頭でも可笑しくなってしまったかと思ったが、男の…焦りながらも希望があるようなその顔に何故だか警戒心を覚えた。
「ねぇ、大丈夫?そんな指輪なんか取り出しちゃってさー」
「は、ははは!なんだ嬢ちゃん、これが何だか分からねぇのか?」
男の言葉に悠奈は眉をひそめる。
「名前くらい聞いたことあるだろう?これは炎の魔石で作られた魔道具。嬢ちゃんたちを纏(まと)めて丸焦げにしてやれる代物だよ!」
「……は?魔道具?」
名前からして魔法の道具だろうことは分かる。
え、何…ていうことは、だ。この世界には魔法が存在するとか、そう言うことなのだろうか。
この男が厨二なだけかも知れないが…完全に否定しきれないのも悲しいが事実である。
まぁけど、これが本当なら……少し興味が出てきた。
とりあえず嘘八百という線を抜いて考えて、この世界には魔法とか魔石とか、それらを利用した道具とかが平然と行き交う世界ということなわけで。
もしかしたら、魔法とかいうのをこの目で拝めるかもしれない。