幸せをくれた君に
「達哉はコーヒー入れてね。お願い」


「あぁ、分かったよ。……それから、理沙、今週の日曜日に久しぶりにデートしようって言っていたけど、ごめん……」


俺が謝ると、理沙はもう分かっているのだろう。


その先に続く言葉を。


「仕事、忙しいんだね」


彼女は先回りして、そう言う。最近、いつもそのパターン。


「あぁ、しばらくは日曜日も返上で頑張らないと」


俺の声は震えていないだろうか。


君に嘘をつくたびに、募る罪悪感。


「そっか……、じゃあ亜由美とショッピングにでも行こうかな」


なんて言いながら軽い足どりでキッチンへ向かう君。


君は、疑うことを知らない。知らないから……怖いんだ。


俺の嘘に気づく日がくることを……。
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