幸せをくれた君に
「いらっしゃいませ」


感情のこもらない声音で俺を迎えたのは、しわひとつ見あたらないスーツを着こなした一人の男。


「お嬢様がお待ちです。こちらへどうぞ」


俺とたいして年も変わらないだろう、その男は先にたち歩きはじめた。俺は、その後をついて歩く。



屋敷の中も、外観と同じく立派な造りだ。


2階へと続く広い階段もテレビドラマかなんかで、ドレスを着いた女が降りてくるような、そんなイメージ。



「なあ、あんた俺のこと嫌いだろう?」


俺は何となく先に歩く男の背中に問いかける。


「………」


返答はない。


予想どおりの反応。俺はかまわず続けた。


「俺がはじめてここへ来た時から、敵対心まるだしだもんな」


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