幸せをくれた君に
それからも、お互いの仕事や会社の話で盛り上がった。


俺は、そんな美香とのやり取りを楽しいとさえ感じていた。


新鮮だった。


俺と理沙はお互いが全く別の職種のせいかそんなふうに、話し合うことはなかった。今にして思えばお互いの知らない姿を見せ合うことを無意識に避けていたのかもしれない。




ワインを飲みながら、雑談を続けていた俺たちだけど、ほろ酔い気分になってきた頃、避けては通れない〈あの日〉のことへと話題が及んだ。


「あの合コンの直前に私、失恋したの」


美香の眼差しはどこか遠くを見つめているかのようだった。


「相手は父の執事で、父に命じられて私の世話役をしているの。無口で無愛想だけど、優しい人なの」


俺はただ黙って彼女の話に耳を傾ける。

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