幸せをくれた君に
「けど、彼が優しかったのは、私が父の娘だから……それだけだったのよ」


「そんな……」


「はっきり言われたの。『貴女の想いに答えられません。私の主人は貴女ではないのです』ってね」


彼女は自嘲気味に笑った。


「私は生まれた時から黒川美香だった。それが当たり前だったから、それが持つ力なんて分からなかったのよ。彼の優しさもすべて、黒川物産への忠誠心だったなんて、そんなことさえ気づかなかったのよ」


そんな彼女の話を聞きながら、俺は今更ながらに激しい後悔に苛まれていた。


あの合コンの夜、俺は彼女の淋しさに気づくこともなく彼女を一晩の相手に選んで、抱いて、終わりにした。


俺は彼女をどれほど傷つけたのだろう。


「すまない、俺は君を……」


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