幸せをくれた君に
そんな彼女に俺が抗うすべなどなかった。


俺は理沙に知られたくない。そして、理沙の父である黒川専務に知られるのも、恐ろしかった。


『次期エース』と持ち上げてくれた社長の顔に
泥を塗ることにもなるだろう。


下手をすれば、出世も恋人もすべてを失うのだ。そんな屈辱に耐える自信もない。





そして、俺は彼女に誘われるまま、あの日もホテルの一室へ入った。


もちろん、『欲情しなければ、契約は白紙』のはずだったのに……。


俺は……。


俺は……。


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