jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
祝い手紙
わたしのストーリーは、‘ホトトギス’で締めくくられるはずだった。
だけど、そうはいかないようだ。
こんな結末、誰も予想できるはずがない。


今日は、2人の結婚式だ。
だけど、結婚式場で大々的に執り行うわけではなく、ここ『jack of all trades』で開かれるのだ。
招待客は、秀斗、志音、あとはこの街の人たちだ。
結婚式を挙げる予定はなかったのだが、街の住人に赤ん坊の存在を秘密にできるはずもなく、復興会会長が無理やり決めたことなのだ。
「香さん、もう1階に行かないと、皆が来るわよ!」
「あぁ、今いいとこなのにぃ・・・・・・」
白いタキシード姿で、インターネットにのめり込んでいる香さんを眺めながら、溜息をついた。
(もう・・・・・・いちよう結婚式なんだからね!)
そうだ、わたしにとっては、一生に1度の大切な行事だ。
なのに、香さんときたら・・・・・・。
最近、香さんは、何でも屋『イベラル・クルスティーヌ』に憧れているのだ。
5年ほど前に海外で開業し、今では有名店舗となり、ネット販売も軌道に乗っている。
雑貨のチョイスがすこぶる良く、独自のセンスが光るオリジナル雑貨は、多くのマニアに愛されている。
オーナーの顔は、ネット上では明らかにされておらず、香さんは海外旅行に行きたいとまで言い出した。
わたしが癪に障る理由は、そのオーナーが女性だからだ。



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