jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
冬の最終月とだけあって、今が一番寒い時期だった。
冷凍庫のようにキンと冷えた部屋だったが、電気がつくと少し温かい気持ちになった。
「こたつの電源いれたから、入りな」
志音からこたつという単語を聞くと、どことなく違和感を感じたが、黒いテーブルに白と黒の格子模様の布団を見ると、これはあり得ると思った。
こたつに入ってくつろいでいると、志音は台所からホットコーヒーを持ってきてくれた。
(・・・・・・やっぱりブラックだ)
わたしが微苦笑を浮かべると、横に座った志音は不思議そうにこっちを見てきた。
「どうした?」
「ううん。気にしないで。やっぱりブラックだなぁって思っただけ」
わたしはブラックコーヒーに挑戦したことがあるが、あまりの苦さに呼吸困難を起こしそうになったので、それ以来一度も口にしていない。
少し大袈裟に言いすぎだが、苦いものは苦い。
だけど、大好きな志音の淹れてくれたブラックコーヒーは、どうしても飲みほしたかった。
うん、一気飲みしたいほどに・・・・・・。
カップに唇を付けると、黒が唇をなぞりそうになった。
そのとき、志音が急にわたしを止めた。
「どうしたの? 志音?」
その瞳はわたしを直視していた。
(何!?)
志音の行動は、香さんと同じようにいつも予測不可能ので、ひとまず安全に気を使い、コーヒーをテーブルに置いた。
「もう我慢できない。ごめん蕾」
そう言われた直後、わたしには信じられないことが起こっていた。

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