jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
わたしの唇を先になぞったのは、ブラック志音の唇だった。
抱き締められていたので、両腕は固定されていた。
「先に、別の黒にキスを奪われるのはいやだ」
我慢を幾重にも重ねてきたであろう志音の思いが、熱となって口内に溶け込んできた。
(志音・・・・・・あなたは男ですか? 女ですか?)
分からなくなった。
だけど、そんなことどうでもよかった。
痛みも罪悪感も感じない至福な快感を初めて味わってしまったわたしは、この行いを禁制することなどできるはずがなかった。
香さんも秀とも持っていない、完璧な愛を見つけてしまった。
性別なんて関係ない、性別を超えた、人間愛だった。

そのままわたしは、絨毯へと押し倒された。
ここまでいくとは思っていなかったので、たぶんわたしの瞳は揺れていただろう。
そのときわたしは更に驚いた。
志音の微動だにしない瞳が、初めて揺れているのを見たのだ。
「蕾・・・・・・やりたい。だけど、蕾には彼氏がいる。だからこれ以上はいけない」
(志音・・・・・・あなたは、なんて綺麗なの? 心の中まで美しい。わたしと違って・・・・・・)
そう、わたしは秀斗がいてもかまわないと思えるんだ。
香さんのときも同じ。
だけど、香さんも最後まで手を出さなかった。
わたしは、なんて欲に駆られた人間なんだろう。
本当はわたしが悪魔なんじゃないか?
わたしはそのとき、秀斗と別れることを決意した。
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