プリーズ・イート・ミー
従業員用の更衣室に入ると、杏里ちゃんはもう着替え終わっていた。

わたしも早くしなきゃ、と、ロッカーを開ける。
中から取り出した私服を、すぐそばに設置されているベンチに無造作に並べ、その上に財布をポンと投げ落とした。

杏里ちゃんはすでにメイク直しに突入してる。ミラーの顔を覗きこみながら言う。


「すみませーん。あたし、急いでるので、もう先、帰りますね」

「あ、うん。イブだもんね。遊びにでもいくの?」

「えへへー。今夜から友達とスノボ行くんですー」

「あ、そういや、明日有給取ってるもんね。てか、今からか~。元気だなぁ」


杏里ちゃんはグロスを重ね塗りしながら、フフって楽しそうに笑う。

すぐそばには大きなボストンバッグ。
やけに大きな荷物だなって思ってたけど、スノボ行くからだったんだ。納得。


「奈々子さん、写メ送りました?」

「送ってない」

「もーダメですよー。桐谷さん、絶対楽しみにしてると思うけどなぁ」

「なんでそう思うのよ?」

「だって、おふたりお似合いですよ。はたから見てると」

「は? まさか!」

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