プリーズ・イート・ミー
え? どういうこと?
置いていたはずのベンチの上、それからしゃがみこんでその下も探す。
だけれど、どこにもなかった。


「ああっ」


その瞬間、頭の中で数分前の映像が再生される。
そうだ! 杏里ちゃんだ!
たしか荷物をまとめる時、ここにあったものを手当たり次第カバンに詰め込んでた。
もしかしてわたしの服も持っていったんじゃないの?

さらにハッと青ざめる。


「てか、財布は?」


服の上に置いてあった財布。それもなくなってる!


「ああーーーー」


なんてこと、ジーザス!
って頭を抱え込んだその時、ポケットの中でスマホが震えだした。

よかった。これはちゃんと残ってて。
わらにもすがる思いで、電話に出る。


《お疲れ。そっちどうだった? もう終わったか?》


耳に届いたその声が、なぜか妙に優しく聞こえて。


「桐谷さん……。助けてください……」


気づけばわたしは彼に懇願していた。

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