雪の足跡《Berry's cafe版》
翌週、私は予定通り車で八木橋のいるホテルに向かった。猪苗代も新緑の季節を迎えていて、春らしい眺めに癒された。磐越道を降りてホテルに向かう。坂の上にそびえ立つ建物の手前に赤い花畑が広がっていた。
「……」
ポピー。赤にピンクや白の花も混じり、一面に広がっている。花摘みを楽しむ家族連れもいて楽しそうだった。私は路肩に車を止めてそれをしばらく眺めていた。
助手席の窓をコンコンと叩く音がした。路上に停めていたのを注意されたのかと思い、慌てて車を発進させようとした。
「おい」
八木橋だった。ユニフォームなのか、襟のあるクリーム色のシャツに緑のエプロンを掛けて麦藁帽子を被っていた。その長身の彼に合わない丈のエプロンについ、鼻で笑ってしまった。窓を開ける。
「笑うなよ」
「だって超似合ってるし」
「うるせえよ」
怒る八木橋を見つめた。無意識に目に焼き付けようとする。でも胸が締め付けられて視線をずらした。
「もう少しで上がるからロビーで待ってろよ」
「うん」
「ロールケーキ食いてえし」
「うん……」
八木橋は、じゃあ、と片手を上げてポピー畑に戻って行った。その仕種がゲレンデでストックを上げて挨拶した姿と重なる。