雪の足跡《Berry's cafe版》

「何だと?? 大体、車だってユキのために」
「私のため? 恩着せがましわねっ」
「お前こそ恩着せがましんだよっ」
「おま……恩着せ……」


 腹が立った。良かれと思ってしたのにそう言われてムッと来た。


「恩着せがましくて悪かったわね!! 澪さんならそんなでしゃばる真似はしないわよねっ!」
「何で澪が出て来るんだよ?」
「ヤギはしおらしいコが好きなんでしょ??」
「そんなこと一言も言ってねえだろ、ったく可愛くねえ」
「ど、どうせ私は可愛くないわよっ! じゃあねっ!!」


 私はコートや帽子を鷲掴みにして部屋を出ようとした。


「何処行くんだよ?」
「買い物っ!」
「アホっ」


 八木橋は私の二の腕を掴んだ。ブンブンと腕を振り回して外そうとしたけど外れない。


「痛えっ」


 私は八木橋の手の甲に噛み付いて腕を掴む力が緩んだ隙に八木橋から離れて部屋を飛び出した。後ろから八木橋の声がしたけど振り返らずに走った。宿舎を出て県道に出て坂を下る。息も切れて苦しくなって立ち止まる。ゼーゼーと息をしながら振り返った。


「……」


 あるのはホテルと宿舎と手前にあるハーブ園、八木橋の姿は無かった。追い掛けて来てはくれなかった。仕方なくトボトボと歩く。バス停でバスを待ち、乗り込む。行く場所なんて無かった。知り合いなんていない。酒井さんとかホテルスタッフぐらいで、ここでは私は一人なんだと思い知らされた。
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