雪の足跡《Berry's cafe版》

 バスは駅に着く。駅前に猪苗代湖に浮かぶ白鳥のポスターがあった。その優雅な佇まいに惹かれ、長浜行きのバスに乗り換える。磐越西線の陸橋を越え、辺りには雪が被った田畑が広がっていた。所々に民家や防風林があるくらいで遮るものは無い。直に湖畔沿いの道に入り、猪苗代湖が見えてきた。奥にそびえる山々、どんよりとした空、その色を濃く映した湖。ただただ黙って冬を受け入れてる、そんか感じだった。きっと言葉にするなら荘厳、そう思った。

 長浜に着き、バスを降りる。文字通りの浜に降りると、湖には沢山の鴨に混じり、白鳥が数十羽浮かんでいた。私に気付いた野鳥達はスイスイとこちらに寄ってくる。


「あ、お腹すいてるのかな」


 浜にある小さな売店で餌を買う。それをポイポイ投げると野鳥達は群がった。あっという間に袋の餌は底をつき、それが見えたのか野鳥達は他所に散れた。


「えっ、何? 無くなったらいなくなるの? ひど……」


『恩着せがましいんだよっ』


「……」


 八木橋の言葉が浮かんだ。餌をあげたんだから可愛く踊りなさいよと白鳥に願うつもりはないけど、八木橋にあんなふうに言われるとは思わなかった。そりゃあ勿論、ありがとうユキ俺はユキと結婚出来て幸せな男だ!、と言わせたい訳じゃない。ただ八木橋の笑顔が見たいだけだった。こないだ講習会から帰って来て畳に寝転がったときみたいに、やり切って満足だ!、って顔……。

 手持ち無沙汰で再び餌を買う。ガサガサという紙袋に反応したのか野鳥が我先にと泳いでくる。餌を放り投げると食べた。鴨より一際大きい白鳥は優雅というよりは豪快で、何と無く八木橋にも似ていた。羽が泥で汚れてても気にしない。私にお尻を向けても気にしない。そんなところも八木橋に似てるって。

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