雪の足跡《Berry's cafe版》
「本当は納車になったらプレゼントしようと思ってた」
「……ごめんなさい」
「謝らなくてもいい。部屋の鍵にでも付けるか?」
「クリスマスプレゼントだね」
「いや……」
八木橋は自分の鍵を取り出した。歯型のついた手でそれを付けようとする。
「本当は車がクリスマスプレゼントだったのにな。こんなちっぽけなキーホルダー……」
「ううん。全然ちっぽけじゃない。ねえ、納車になるまでとっておいてもいい?」
私もそれを眺めた。きっとあちこち探してくれた筈だし、私の好きなものを知ってるのが嬉しかった。研修先で私を思ってくれていたのも喧嘩して飛び出した私を探しに来てくれたのも。
「早く帰って、罰ゲームしないと」
「えっ、ええっ?」
「お前何回ヤギって言った?」
伝票を持つ八木橋の後ろを歩く。会計を済ませて、外に出る。空からは白い雪。これは積もるぞ、と八木橋は言う。隣に並んで自分から八木橋の手に触れた。八木橋は私の手をそっと握り返す。
「ユキ、帰ろ」
「うん。帰ろ」
「おんなじトコ帰れるっていいな」
「うん……」