月の絆~最初で最後の運命のあなた~
自分でも、何故そんなことをしたのかが分からないまま、ただ手首を掴んでいると、女は力強く振り返ると手を引き抜いた。
近くで見ると、目立ったところがないなんて考えた自分を蹴り飛ばしてやりたくなる。
意思の強そうな目は印象深く、人に忘れさせない魅力があった。
――何か喋ってくれ。声を聞かせてくれ。
今度は、声を聞きたい欲求だけが募る。
興味深いことに、まるで狼呀の声が聞こえたかのように、一度びくつくと果敢にも睨み付けてきた。
「何よ! 痛いじゃない」
狼呀の心が震えた。
「ああ、あの声だ」
「えっ? なんのことを……」
「ようやく見つけたぞ」
女は訳が分からないといった顔をしたが、無視して狼呀は背中に両手を回して引き寄せた。
「ちょっと、何すんのよ!」
力に自信のある狼呀の腕から、彼女はあっさりと身を引くと、頬を叩いてきた。