月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「いい顔してるからって、調子のってんじゃないわよ! 痴漢で警察に突きだされたいの?」
生まれて二十六年。女に平手打ちをくらった記憶はない。
不覚にも、その衝撃で固まっているうちに、女は走り去ってしまった。
「あっ……名前聞くの忘れた」
狼呀は彼女が出てきた建物を見上げた。
今の時間に、ナイトクラブはやっていない。
何度か打ち上げをしに来た事があるから、狼呀でもそれなりに知っている。
ただ、気になる事はもう一つある。
女は狼呀の最も嫌う匂いをさせていた。
「まさか……あいつらの仲間なのか?」
思わず喉から低い唸り声が漏れた。