月の絆~最初で最後の運命のあなた~



 海外の地下鉄とは違い、物騒ではないかもしれないが、近年の日本は異常犯罪率が上がっている。


 用心に越した事はない。


 怪しい人間はいないか確認して、あたしは電車を降りた。


 帰宅を急ぐ人、椅子に座って電話で雑談している人、酔いつぶれ寝ている人。


 そんな人々を尻目に、あたしは階段を上って駅のホームを出ると、改札口を抜けて外に出る。


 外に出ると小腹が空いてきて、コンビニやパン屋が目に入ったけど、誰かの視線を感じてあたしはバス停に向かって歩きだした。


 歩き出してもなお、視線はついて回る。


 自然と歩き方が速足になっていた。


 心が落ち着いたのは、バス停にすでに停車していたバスに乗り込み、座席に落ち着いてから。


 一番後ろの窓際に座り、後から来る人を眺めて怪しい人物がいないか観察してみたけど、特に気になる事はなかった。


 気のせい?それにしては、嫌な感じだった。


 警戒心を解くことなく眺めていると、バスは扉を閉めて動き出した。



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