月の絆~最初で最後の運命のあなた~
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なんとなく満たされた気分で、狼呀は静かに車を走らせた。
せっかくの雰囲気を、その場をつなぐための会話なんかで台無しにしたくない。
それに、マリア自身も望んでいないことを狼呀は感じとった。おまけに、幸せを感じてくれていることを感じ取り、彼自身も幸せになる。
たいした渋滞に巻き込まれることなく秩父市内に入った途端に、彼女は看板を指差した。
「ミューズパーク?」
「そう」
一言だけ呟くと、マリアは靴を脱いで足を引き寄せて膝に顔を埋めた。
今では、それが照れ隠しなのだと分かる。あまりのいじらしさに、これまで以上に保護欲をかきたてられた。