月の絆~最初で最後の運命のあなた~




[5]


 なんとなく満たされた気分で、狼呀は静かに車を走らせた。


 せっかくの雰囲気を、その場をつなぐための会話なんかで台無しにしたくない。


 それに、マリア自身も望んでいないことを狼呀は感じとった。おまけに、幸せを感じてくれていることを感じ取り、彼自身も幸せになる。


 たいした渋滞に巻き込まれることなく秩父市内に入った途端に、彼女は看板を指差した。


「ミューズパーク?」


「そう」


 一言だけ呟くと、マリアは靴を脱いで足を引き寄せて膝に顔を埋めた。


 今では、それが照れ隠しなのだと分かる。あまりのいじらしさに、これまで以上に保護欲をかきたてられた。


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