月の絆~最初で最後の運命のあなた~



 狼呀は黙って車を走らせ、坂を登っていく。


 どんどん家が少なくなっていき、徐々に緑と土の匂いが強まってくる。


(心地がいい)


 狼呀はそう思った。


 人間と人狼の双方が、そう思っていた。


 小さな山小屋風の建物がある駐車場に車を停めると、マリアはさっさと車を降りた。


 そして、大きく伸びをしてから、満ち足りたようなため息を吐く。


「こっちよ」


 マリアはジーンズのポケットに両手を突っ込み、狼呀を待っている。



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