月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「よく来てたのか?」
「ええ、人との関係や環境に疲れると、休日に父と母が連れて来てくれたの。あたしには、自然のエネルギーが必要だって分かってるみたいにね」
今まで会った中で、今日のマリアは落ち着いていると狼呀は思った。
表情は穏やかで、絆から伝わってくる思いも優しい。
「あたしは都会に向かない。一度、その時に大好きだった歌手に憧れて、専門学校に通ったの……馬鹿みたいよね」
「いや……夢を持つのは、どんな理由だろうと大切さ」
「ありがとう。それで、一年……半年くらい経った頃には無理がきちゃった自然が恋しかったし、そもそも誰かに教わるって事がむいてなかったのね」
その話を聞いた瞬間、狼呀は何かが引っ掛かるのを感じた。
でも、うまく掴めない。
「そのあと、ちょっと問題があって人の視線に過敏になって、人を信用できなくなった。信じられるのは父と母……それと大事なソウルメイトだけ」
そう言ってマリアがどこか遠くを見ると、突然マリアの膝に大きな黒い犬が前足をのせた。