月の絆~最初で最後の運命のあなた~
瞳は焦げ茶色で、きらきらしたその目の奥には人への信頼が浮かんでいる。
「あら、あなたは何処から来たの?」
話を中断した彼女は、大きな犬の両前足を優しく掴んで話しかけた。
とても柔らかくて、愛を感じられる声。
〈ソウルメイト〉
その言葉を口にした時にも、同じ愛を感じた。
彼女が絆を受け入れた今、相手が誰なんだという思いや怒り、悲しみはない。ただ、いつの日か自分に向けられることを願うだけだ。
しばらくすると、若い夫婦が走ってきた。
「すみません! いきなり走っていってしまって」
「いいえ、大丈夫ですよ。とっても可愛い子ですね」
マリアは首輪を握ると、飼い主がリードを着けやすいようにしてやった。