月の絆~最初で最後の運命のあなた~




 犬について少し話をして、去っていく飼い主に連れていかれる犬にマリアが手を振ってやると、犬は名残惜しそうに何度も振り返っていた。


「そろそろ、あたしたちも行こうか」


「いいのか? もう少しくらい」


「これ以上ここに座ってたら、石になっちゃうわよ」


 気分が軽くなった様子のマリアに、狼呀も腰を上げた。


「そうそう、駐車場に山小屋みたいな店あったでしょ? あそこのクッキーが美味しいの」


「クッキー?」


「そう、手作りクッキー。あと、チョコチップマフィンとラスクも美味しいのよ。いつも買って帰ってた」


 懐かしむような目の奥に、見え隠れする淋しさが、狼呀の心をかきむしる。


 少しでも淋しさを埋めてやりたくて、腰に腕を回して引き寄せた。


 マリアは抗わこともせず、おずおずと狼呀の腰に片方の腕を回す。


 それから駐車場に戻るまで、無言の時間が続いたが、悪い雰囲気ではなかった。





 


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