月の絆~最初で最後の運命のあなた~
非常階段の扉を開け、血液銀行に入ると、血と吸血鬼の匂いに吐き気が襲う。
鼻にシワを寄せ、導かれるまま進んでいくと、受付にいた人間の女が止めに入った。
「すみません。そちらはレン様のお部屋ですので入れません!」
「そいつに用があるんだ。邪魔をするな」
華奢な女を睨み付けると、相手はよろよろと後ずさった。
狼呀の人狼の瞳に、恐怖を感じたのだろう。
周りにも同じ視線を向けると、止めに入る者は一人もいなかった。
不死の吸血鬼も、人狼と戦えばそうは言っていられない。
誰だって、自分の命はおしい。
特に吸血鬼になろうなんて人間は、死を恐れているからこそ志願するのだ。
狼呀はずんずんと進み、一つの部屋の前で足を止めた。