月の絆~最初で最後の運命のあなた~


 なんの札もかかっていないが、絆の道筋とレンの匂いで狼呀は間違いないと確信した。


 扉のノブに手をかけて開けようとすると、中から話し声が聞こえてくる。


 狼呀は一度手を離し、意識を耳に集中させた。


「いいかい? 僕は、君の血を致死量ギリギリまで飲む。そのあとで、僕の血を飲めば……明日には吸血鬼だ」


「ええ、かまわない」


(マリアの声だ)


 そう気づいた次の瞬間には、狼呀は扉を開いて中に入っていた。



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