月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「俺が来たことは、すぐに分かったはずなのに……なぜ止めなかった?」
自分の机に軽く腰かけているレンは、腕を組んで今まで静かに見守る姿勢を崩さなかった。
もしも、花嫁としようとしていたなら、今ごろ狼呀とレンは、誰も止められない程の戦いを始めていただろう。
だが、レンは全く反対の反応を示していた。
「君が来るのを願っていた気がする。止めに来るのを」
「なぜだ?」
吸血鬼がそう言いはじめたことに、狼呀は驚いた。人狼が知っている吸血鬼は、傲慢で自己中心的というイメージだ。
生きるためだと言って人間の血を吸い、不老不死である吸血鬼は、全ての種族の中で一番優れていると考えている。
吸血鬼全員が、腐ったロクデナシだと思っていた。