月の絆~最初で最後の運命のあなた~



「俺が来たことは、すぐに分かったはずなのに……なぜ止めなかった?」


 自分の机に軽く腰かけているレンは、腕を組んで今まで静かに見守る姿勢を崩さなかった。


 もしも、花嫁としようとしていたなら、今ごろ狼呀とレンは、誰も止められない程の戦いを始めていただろう。


 だが、レンは全く反対の反応を示していた。


「君が来るのを願っていた気がする。止めに来るのを」


「なぜだ?」


 吸血鬼がそう言いはじめたことに、狼呀は驚いた。人狼が知っている吸血鬼は、傲慢で自己中心的というイメージだ。


 生きるためだと言って人間の血を吸い、不老不死である吸血鬼は、全ての種族の中で一番優れていると考えている。


 吸血鬼全員が、腐ったロクデナシだと思っていた。


< 240 / 356 >

この作品をシェア

pagetop