月の絆~最初で最後の運命のあなた~


[4]


 ひたすら狼呀は、心の中で自分を責めた。


(誘惑して手に入れて何になる!)


 部屋に戻りたい本能をどうにか捩じ伏せて、エレベーターに乗り込み地下へのボタンを押す。


 絆が切れているせいで、人狼としての半身は取り返そうと狂暴な気持ちになっている。


 マリアの潤った熱を感じて、途中でやめる為に――あの部屋から出る為に、理性をかき集めるのに苦労した。


 満月が、自制心よりも欲望を強めていたからだ。


 あのままベットへ一緒に入ったら、行為の最中に殺してしまう可能性だってある。


 今は、危うい橋を渡っているようなものだ。


 静かにエレベーターは目的の階に止まり、狼呀は重い足取りで降りた。


「狼……来ないかと思ったぞ」


「そんな訳あるか。様子はどうだ?」


 先に仕事を始めていた瑞季は、手に持っている鍵の束を振った。





< 263 / 356 >

この作品をシェア

pagetop