月の絆~最初で最後の運命のあなた~



「自己紹介もしないのにそんな事言われたら、彼女が驚くでしょ?」


「ああ、そうよね。ごめんなさい」


「まったく。マリア、彼女はアルモニー。アルモニー、彼女はマリアよ」


「アニーと呼んでちょうだい。会えて良かったわ」


「ありがとうございます、アニー」


 アニーは、あたしの肩に軽く触れてから、キッチンのほうへと向かって行った。


「ねえ、絢華さん。あのアニーって人が言ってたのって何? あたしが誰に似てるの?」


「あー、その事は後ね。とにかく、まずは食べよう」


 何か引っかかるものを感じたけど、食事が終わるまで質問に答えてくれる気はなさそうだ。


 あたし自身、さらに増えた料理が美味しそうすぎて我慢ができない。


 話なんて後でいい。


 ピザに手を伸ばし、一口かじる。


 サクサクの生地に、コーンと照り焼きチキン、チーズがのっている。


 その上に、甘いタレがかかっていて、それがまた美味しい。


 もう、周りの視線は気にならなくなっていた。


 美味しすぎて、どんどん手が進む。


 でも、喉が乾いてきて、飲み物を頼もうと顔を上げようとしたら、目の前にコップが置かれて目を瞬かせた。


 すると、突然のざわめきがあたしの耳に届いた。






< 289 / 356 >

この作品をシェア

pagetop