月の絆~最初で最後の運命のあなた~




 アニーが気づいて、飲み物を持ってきてくれたのかと思ったけど、机に伸びる影や気配、匂いがあきらかに違う。


 ひれ伏したくなるというか、恐怖とは違う意味で視線をコップから上げられない。


「ありがとう、冬呀」


 気配だけで、絢華さんが椅子を運んできたのが分かる。


「マリア、彼は冬呀よ」


 紹介されてしまっては、無視する訳にはいかない。


「はじめまして、あたしは」


 ゆっくりと顔を上げて、あたしは言葉を失った。




< 290 / 356 >

この作品をシェア

pagetop