月の絆~最初で最後の運命のあなた~



「お前たちは、反逆罪としてロームに送る」


「そんな!」


 あまりのショックに、二人は体の力を抜いた。


 狼呀と瑞季が手を放しても、逃げるどころか、その場にへたりこんだ。


 周りの女たちまで、ざわつきはじめた。


 それもそうだ。


 ロームとは、アルファを持たない放浪者の人狼が集まる酒場。


 乱暴で、責任なんてものをもたない者ばかりで、危険な場所でもある。


 だが、マリアのことについて、喋るつもりがないなら仕方ない。


 これ以上は、時間の無駄だと判断して、狼呀は瑞季に目を向けた。


「行こう。早く探さなければ」


 満月までという期限もある。


 瑞季と二人で、エレベーターに向かおうと、女たちに背を向け――。




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