月の絆~最初で最後の運命のあなた~



「待って! 言う」


 声を張り上げたのは、ソーニャだった。


 横にいるエレンは、信じられないって顔をしている。


「ソーニャ、あんた!」


「うるさい。あたしは、はじめから反対だった! でも、レイラに逆らえなかっただけ……あたしは、もう嫌よ!!」


 女同士の喧嘩がはじまりそうだった。


 だが、そんなものに付き合っている時間は、狼呀にはない。


「二人ともやめろ! ソーニャ、話せ」


 狼呀の一喝で、二人は黙った。


 そして、ソーニャだけが口を開く。


「あの子は、狼シフターの縄張りにいます。そこなら、絶対に生きて帰ってこれないからって……レイラが」


 血の気が一気に引いた。


 怒りも、そのおかげで無くなったが、代わりに心臓が潰れそうなほどの不安が生まれた。


 シェイプシフターの存在は、作り話だと思っていた。


「ソーニャ、よく話してくれたな。だが、ローム行きはないが、別の一族のところへは行かせる」


「かまいません。ローム行きより、マシです」


 真っ直ぐ狼呀の目を見て話す姿勢に、アルファとして感心した。


 なのに、なぜ今までレイラたちの金魚のふんをしていたのか不思議なくらいだ。


 彼女なら、他の一族で上手くやっていけるだろう。




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