月の絆~最初で最後の運命のあなた~


「よう、マリアちゃん」


「あ、琅吾(ろうあ)さん……おはようございます。お邪魔してます」


「あまり快適とは言えない家だが、いくらでもゆっくりしていってくれよ」


 普段〈バイソン〉では厨房にいてあまり顔を見る機会はないけど、一度見たら忘れられないくらいのハンサムだ。


 彼は二つの包みを持って階段の下までくると、あたしと絢華さんに一つずつくれた。


「冬呀のところでメシを食うだろうが、とりあえず食いながら行け」


「ありがとう。じゃあ、行ってくるね、兄さん」


「ありがとうございます」


「またな」


 琅吾さんに見送られて、あたしたちは家を出た。


 外に出ると、思わず深呼吸した。周りにビルやマンションがない代わりに、どこまでも続く森があって、かなり寒いけど和む。


「せっかくだから、食べちゃお。まったく兄さん……マリアがいるからって、張り切っちゃって」


「え、そうなんですか?」


「うん。普段、家で作るなんてしないもん」


 包みを開けると、温かいコーヒーの香りとパンとハムの匂いがあたしの心を満たした。




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