月の絆~最初で最後の運命のあなた~
今にも飛びかかり、狼呀の喉をかみきりそうな勢いだ。
「それなら聞くが、お前と一緒に帰ったとして、マリアは幸せか? 群れをつくることも出来ない人狼の中にいて、彼女の全ては満たされるのか?」
狼呀は、なにも言えなくなった。
マリアの命を狙ったのは、家族とも思っていた仲間だ。家族に認められず暮らすのは、苦痛にしかならない。
だが、伴侶の絆は理屈でどうにか出来るものでもないのだ。
「マリアは、俺たちが慕っていたアルファ夫婦の娘だ。彼女の幸せのためなら何でもする。だが、お前だけは認めない」
「あんたに、何が分かる! マリアは俺の伴侶だ。俺だけが幸せにできる」
「思い上がるなよ、人狼。今、彼女がもっとも求めている願いを叶えられるか?」
「願い?」
「マリアは、家族の苦しみを取り除くための報復を望んでいる。お前に、人間が殺せるか?」
人狼は、吸血鬼から人間を守るために、吸血鬼の宿敵として生まれたと伝わっている。
人間には、満月がもたらす狂気の時以外には手を出せない。
まるで、プログラミングされたロボットのように、それだけは出来ない。
人間を手にかける。
そう考えただけでも、吐き気がしてくるほどだ。