月の絆~最初で最後の運命のあなた~
[2]
エレベーターが開いた瞬間、狼呀は野性的な魅力を持つ顔を歪めた。
吸血鬼と血の匂いが鼻を突く。
モデルの仕事上、仕方なく来たが、本当は来たくもなかった。
吸血鬼と同じ空間にいるくらいなら、スカンク10匹に囲まれたほうがましなくらいだ。
それが、狼呀の本音でもある。
エレベーターの前では、狼呀の言わんとしたことが分かったのか、一人の女がくすりと笑った。
「問題は起こさないでね、狼呀」
「そう願うんだったら、はじめから寄生虫どもとの仕事は入れないでくれ……レイラ」
「無理ね。世の中の淑女たちは、吸血鬼の顔とあんたたちの体がお好みなの。雑誌の売り上げに、しっかり貢献しなさい」
仲間内で最も色気のあるレイラは、狼呀の胸を撫で下ろすと、腰を振りながら行ってしまった。