月の絆~最初で最後の運命のあなた~
一緒に来たときとは違い、青い瞳は明るく輝き、肌の血色がいい。
髪を撫でられるたびに当たる指先も、さっきよりもほんのりと温かい。
「次の撮影が、もうすぐ始まるんだけど……」
「あ、うん。飲んでく?」
「いや、大丈夫そうだから今はいいよ。 だから、少しでも栄養をとりなさい。廊下の奥に食べ物の自動販売機があるから、食べるといいよ」
あたしが体を起こすと、レンは自分の財布を差し出した。
「なに?」
「好きに飲み食いしていいよ。別に、これが今日のお礼って訳じゃない。後でレストランには、ちゃんと連れてから安心して」
「小銭くらい持ってる」
「いいから、いいから。この財布は預かっておくよ」
立ち上がったレンは、よく見慣れた財布をあたしの目の前でちらつかせた。