月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「それ、あたしの財布!」
奪い返そうとしたら、あたしの手は無駄に空を切った。
例え運動神経がよかったとしても、吸血鬼が相手では特に役立たない。それに、レンはあたしよりも身長が二十センチは高い。
疲れるだけだから諦めると、レンはさっさと部屋を出ていった。
手元に残ったのは、レンの財布。
予定外の借りは作りたくない。
でも、空腹が酷すぎるあたしは、大きなため息を1つ吐いて彼の財布を手に立ち上がった。
部屋を出ると、斜め向かい側には確かに何台もの自動販売機が並んでいる。
飲み物、パンとお菓子、フライドポテトや焼おにぎりまであって、あたしは考え込んだ。
いっそうの事、悩むモノ全て買ってしまおうか。
でも、他人の財布からお金を出すとなると心が痛む。あとで全額返せと言われるのも嫌だ。
とりあえず、空腹具合から焼きおにぎりを買うためお金を入れた。ボタンを押すと出来上がりまでの時間が表示され、調理が始まる。
意外と長い調理時間だったからパンを買い、お茶を買った。完璧に油断していた。
足音にも、気配にも気を配っていなかったから、振り返ったところで思わず悲鳴を上げそうになった。