月の絆~最初で最後の運命のあなた~
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彼女がいることに気がついた時には、幻かと思った。
会いたい思いが強すぎて、匂いまでも再現されてしまったのかと目を疑い、狼呀は思わず近づいていた。
幻じゃないと気づいたのは、振り返った彼女が自分の望んでいる表情をしなかったからだ。
恐怖に続いて、表れたのは嫌そうな顔。
誰が幻で、そんな表情を見たがる?
狼呀は彼女が抱く自分に対する評価に、気づかないフリをして話しかけた。
「また会ったな。俺は狼呀だ。月城狼呀」
「別に名乗らなくていい。親しくする気はないから」
彼女は冷たく言い放つと、自動販売機の取り出し口からペットボトルを取り出し、食べ物の香りがする自動販売機の前に立った。
やはり、最初の印象がいけなかったらしい。
ならば仕方がないと、狼呀は意地悪な男になる事にした。
「学校や親から習わなかったのかな? 相手が名乗ったら、自分も礼儀として名乗るって」