月の絆~最初で最後の運命のあなた~



[4]


 彼女がいることに気がついた時には、幻かと思った。


 会いたい思いが強すぎて、匂いまでも再現されてしまったのかと目を疑い、狼呀は思わず近づいていた。


 幻じゃないと気づいたのは、振り返った彼女が自分の望んでいる表情をしなかったからだ。


 恐怖に続いて、表れたのは嫌そうな顔。


 誰が幻で、そんな表情を見たがる?


 狼呀は彼女が抱く自分に対する評価に、気づかないフリをして話しかけた。


「また会ったな。俺は狼呀だ。月城狼呀」


「別に名乗らなくていい。親しくする気はないから」


 彼女は冷たく言い放つと、自動販売機の取り出し口からペットボトルを取り出し、食べ物の香りがする自動販売機の前に立った。


 やはり、最初の印象がいけなかったらしい。


 ならば仕方がないと、狼呀は意地悪な男になる事にした。


「学校や親から習わなかったのかな? 相手が名乗ったら、自分も礼儀として名乗るって」




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