月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「……マリアよ。なんなの? ムカつく奴ね」
「マリアか。苗字は?」
「……なんでそこまで」
「俺は名乗ったぞ」
マリアは薄い茶色の瞳で睨み付けてきた。
彼女の性格といい、目の色といい、まるで狼だ。
行為の最中に肩に埋まる歯と、剥き出しの肌に立てられる爪を想像していたところで、食べ物が出来た事を告げる音に邪魔された。
「楠木。楠木マリア。これでいい? せっかくの食べ物が冷めるんだけど」
「良かったら、一緒に食べないか?」
もっとマリアの声を聞いていたい。
全身に触れて、自分の伴侶である印を刻みたい。
それなのに彼女は――残酷な事を口にする。
「あたしは寛いで食べたいの。パートナーの部屋で食べるから、結構よ」