月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「マリア。それ以上、彼に近づかないほうがいいよ」
「あ、レン!」
自分に向けられる時とは異なる声に、狼呀は怒りが爆発しそうになるのを感じていた。
「いいから、おいで。彼は、少し具合が悪そうだから休ませてあげないと……彼女に任せればいい」
「ええ、彼は私が」
心配と明らかに今の状況に困惑しているレイラの声が聞こえてきた。
狼呀としては、マリアを引き留めたかったが、今は自分自身を信用できない。
彼女が行くままにしようと見ていると、歩くたびに揺れる髪の間から――まだ新しい牙の痕が見えた。