月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「何してやがる!」
人間の声なのか、獣の唸り声なのかわからない突然の声に、あたしの意識ははっきりとした。
声の主は、狼呀だった。
吸血鬼であるレンを軽々と引き剥がし壁に叩きつけると、まるで荷物のようにあたしを肩に担いで歩き出す。
「ちょっと! 下ろしなさいよ。下ろせったら!」
両手で拳を作って背中を叩いても、膝で胸を蹴っても、気にした素振りもなく歩いている。
あたしの体重は軽いとは言えないし、力だって弱くない。
誰がどう見たって嫌がっているっていうのに、廊下ですれ違う人々は驚いて道を開けていく。
――少しは不信に思って止めなさいよ!!
誰も止めようとしない事に腹を立てていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「狼呀! ちょっと、何してんのよ。待ちなさいったら」
立ち塞がったのは、数十分前に狼呀を心配していた女だ。
ヴィヴィアンとは、また違ったセクシーボディの持ち主。
あたしの中では、そう登録されている。