女神の災難な休日
「時間ないから私行きます!今日も残業?帰りあっちでご飯食べてきていいかな?」
雅洋に靴を履きなさいといいながら台所を覗いてそう言うと、彼はコーヒーを飲みながら頷いた。
「母に宜しく。焦って事故らないように気をつけて」
「はーい!」
コートを着てマフラーで首元をぐるぐる巻きにしていたら、夫がおやおやと呟く声が聞こえた。
「昨日この近くのコンビニに強盗入ったらしいぞ。しかも親子が乗った車奪って逃走だってさ」
咳き込むかと思った。私は口元を引きつらせながら、息子を急かす。早く早く履いて~!!そんなことは知らない夫がまだ話している。
「年末に何やってんだよ・・・それも、コンビニで盗れたの4万だけだったってさ。ご苦労なこった・・・」
「行ってきます!」
ガラガラとドアを開けて雅坊を押し出した。
ムカついていた。
だから全速力でチャリをこいだ。全身に満ち溢れる怒りを力にかえていた。
だって・・・だって・・・・。
あのバカ野郎、たかが4万しか盗ってなかったのかーっ!!!!
人の休日潰しといてたかが4万の強盗・・・本当情けない!それであんなに青ざめてたわけ?冷や汗かくような金額じゃないだろうがよっ!!
もうちょっとだけでも蹴り飛ばせばよかった、そう、その日一日中思っていた私だった。
「女神の災難な休日」終わり。


