ストロベリー・キス
でもその新人サンタさんの姿が見当たらない。
始まってから、突然の登場になるんだろうか。戦隊モノの登場のように。
舞台の袖でそんなことを考えていると、大きな音でクリスマス音楽が流れ始め、クリスマス会が始まった。
子どもたちは音楽に合わせて歌を歌い、サンタの登場を今か今かと待ちわびている。
そこへ「ホーホホホホッ!!」と盛大な笑い声とともに、サンタに扮した永瀬のおじさんが遊戯室へと入ってきた。
年少組の子どもたちは、初めて見るサンタクロースに興味津々。目をキラキラさせて近づき、長く伸びた髭をもさもさと触っている。
中には驚いて泣きだしてしまう子もいたけれど、そこは永瀬のおじさんも慣れたもの。その子の目の高さまでしゃがむと大きな袋からプレゼントを取り出し「泣かないでお嬢ちゃん。ほら、クリスマスプレゼントだよ」と優しく話しかけた。するとその子の涙顔は一瞬で破顔してしまうんだ。
おじさんが私にピースサインを見せると、私も送り返す。
そんなことを繰り返しながら、子供一人一人にプレゼントを渡していく。
もうあと数人でプレゼントを渡し終えてしまうというのに、さっきおじさんが言っていた“新人サンタ”は姿を表さない。
一体いつになったら、やってくるのだろう。
遊戯室の外や廊下側をキョロキョロ見ていると、今度は主任先生が私の隣にやってきた。
「美玖先生、今日のサプライズ楽しみねぇ~」
「えっ? 森川先生、サプライズのことご存知なんですか?」
「あら、いけない。これは内緒だったわね。今のは忘れて」
忘れてと言われて「はい、わかりました」なんて言う人がどこにいるっていうのっ!!
そんなこと言われたら、余計気になるじゃない。
他の先生たちを怪しい目で見ると、さっとそっぽを向かれてしまう。
これは絶対に何かある。私に内緒で、何をしようとしているんだろう。