にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「いただきマース!」
「こ、こら……」
私がテーブルの前に行く前に食べ始めたミィコ。あと数歩だけど、数歩が長い。そのテーブルの前に行く間にもサラダは一口、二口となくなっていく。何度も言うけど、ここは私の家だぞ!
おあずけはできんのかね、野良猫か!
うむ、躾けねば。
「ミィコ、もうちょっと待ってくれたって……」
「ごちそうさまー」
なぬッ!? もう食べたの?! 見ると一つの皿に盛られたサラダは1/3しか残ってないし、ミィコの分のトーストとコーンスープは確かに空っぽだった。
さっさと後片付けをして自分の皿を洗い、「俺、仕事行くね……って、あ、歯磨き、歯磨き」と言ってバッグから歯ブラシを取り出すミィコ。
こ、これは呆然とするしかない。いや、見て見ぬふりだ。私にだって今日は仕事に行く、という使命がある。私は平常心を装い、サラダをつまみ始めた。
……やっぱりミィコは料理が上手だと思う。サラダにかかっていたドレッシングはコクがあってどんどん食べちゃうし、ピザトーストも濃すぎない素朴なケチャップと野菜の味にほんの少しだけ噴火しそうだった私の心は休火山となった。
「今度こそ、俺、仕事行くわ。あ、一緒に行く? 仕事行くの大変だよね?」
「結構です。どうせ、タクシーじゃないと無理だもん」
「おお、いいね、タクシー」
思わぬところに食いついてきたミィコにあきらめを含んだため息をついた。
「…………勝手にすれば」
「はぁーい♪」