ひとりの夜
「……はぁ~」
目の前の半裸の男は、盛大に溜息をつく。
「誠一さん…?」
「おまえなぁ、その気にしといて帰れはないだろ?」
「その気って…」
私はお風呂から出てきただけで、そっちが勝手にその気になってただけだし。
来てほしいって1%くらいは思ってたけど、でも、頼んだわけじゃないし。
そもそも、何も喋らせずに攻めたててきたのはそっちだし…。
じとっと誠一さんを見やると、諦めたように軽く笑ってチュッっと額に唇をつける。
「俺の、大切な人のところへ行けってさ」
「え…?」
口を付けたまま喋るもんだから、額の生え際の辺りがくすぐったい。
「キモイってよ」
「えぇっ?」
「ハハッ……あいつも男になってきたってことだよな」
キモイって息子に言われたのに、何故か嬉しそうな誠一さん。
私のところなんて来て、ちちくりあってるってわかったら、もっと言われるのに。
なんでそんなに余裕で笑ってるの?
疑問符だらけで見つめる私の視線に気が付いたのか、急に笑いは封印して、ぎゅっときつく抱きしめる。